オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第75回は「3本脚のリカちゃん」だ。

「3本脚のリカちゃん」とは器物の霊、つまり付喪神(つくもがみ)に属する妖怪である。

 工場生産時、ちょっとしたミスによって人形に3本目の脚がつけられてしまった。学校のトイレや公衆便所の個室にいると噂されており、物を使い捨てる人間社会に対して深い恨みを抱いているようだ。

 夕方か夜に学校のトイレで「3本脚のリカちゃん、遊びましょー」と言うと、「はーい」という返事とともに個室の中から出てくる。一見、普通に市販されている人形と同じ姿をしている。しかし、左右の2本の脚はプラスチック製なのだが、真ん中にある3本目の脚は血が通っているように見える。

「おままごとにする? かくれんぼにする?」と聞いてくるのだが、「おままごと」と答えると包丁で刺されて殺され、「かくれんぼ」と答えるとどこかに連れ去られるという。

 また、別バージョンでは、ある人物がトイレに入ると人形が落ちているのを見つける。その人形を拾い上げると、工場のロスト製品であったらしく、脚が3本ついている。そして、その人形は「私、リカちゃん。呪われてるの」とつぶやく。これを聞いた人物は恐怖のあまり人形を投げ捨て、自宅に逃げ帰ってしまう。だが、耳の中でリカちゃん人形の声がずっと響き続け、最終的には精神を病んでしまうといわれている。

 リカちゃん人形は昭和40年代から現在まで爆発的な人気を誇り、設定は「永遠の小学生」だ。つまり、年を取ることのない不老不死の存在である。このあたりの設定がファンタジーを生み出すのに十分な要素といえよう。永遠に時間の流れることのない世界に対して違和感を持った現代人が都市伝説というフィルターを通して幻想的なフォークロアを作り出し、この妖怪を生み出したものだと思われる。