【ほめ達・松本秀男 人生を変えることば選び】秋の本格的な競馬シーズン到来ですね。コロナ禍の中、まだまだ規制もあるようですが、競馬場への入場も再開され、ようやくあの雰囲気を楽しめるとワクワクされている方も多いと思います。

 30年近く前、私がさだまさしさんのツアースタッフだったころ、先輩スタッフは競馬ファンだらけ。ツアー先の移動日に地方競馬を回る先輩もいました。さださんはGⅠのみでしたが競馬好き。春や秋には楽屋で東スポや競馬新聞を見かけることもしばしばありました。先輩たちは勝てば機嫌はいいし、コンサートの後におごってもらえてうれしかったのですが、負けがこむと機嫌が悪くて仕方ない(笑い)。まあその人間らしさが魅力でもありましたが。
 時を経て、先日さださんの楽屋を訪ねた時に、昔、私がお世話になった舞台監督さんとばったり会いました。すると「松本くん! ほめる達人やってるんだって? ならばこの俺をほめてくれよ!」。何やら怒鳴られるくらいの勢いです。何かあった感じ…。

「この不運なオレをほめてくれよ! 競馬でからっきし当たらない、このかわいそうなオレを!」

 うわあ、この方あれからずっと競馬を続けてるのね、しかも最近負けたんだな…よし!と気合を入れてほめようとするが早いか、そばにいたさださんがカットインしてきます。

「もうね、あなたのような人こそ、真の競馬ファンと言えるね。だってそうでしょう、競馬歴もはや半世紀、ずっとずっと馬たちを応援し続けていらした。それも、あなたは馬を一生懸命選んできたものねえ。この馬! 君こそが素晴らしい馬だ! キミにボクは賭けるよ! ガンバレよ!と、お金の見返りがいっさいなかったにもかかわらず、ずっとずっと馬たちを愛し続けてきた! まさに! あなたこそ競馬ファンの見本。馬たちへの深い愛のある方だ! いや~、素晴らしい。私はあなたのような人こそ、本当の競馬ファンだと思います!」

 みごとなほめっぷり。やはりさださんはネイティブほめ達です。本職の私が出る幕はありませんでした。それを聞いて舞台監督さんも、「ガハハ! だよな! オレのお金は社会貢献だ!」とさっきまでのしかめ面はどこへやら、愉快そうにステージに戻っていかれました。

 たとえ競馬で負け続けていても社会貢献だと笑顔になれる、粋で健全な人生の達人たち。このコロナ禍においてはそんなゆとりも大事ですよね。僕も今週末は久々に馬券を買ってみようと思います。

☆まつもと・ひでお 1961年東京都生まれ。国学院大学文学部卒業後、さだまさし氏の制作担当マネジャー、ガソリンスタンド経営を経て、45歳で外資の損害保険会社に入社。トップ営業マンとなり数々の実績を作る。現在は一般社団法人・日本ほめる達人協会専務理事を務め、企業セミナーなど多方面で活躍中。著書に「できる大人のことばの選び方」や「できる大人は『ひと言』加える」など。